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    紅殻町博物誌 感想

    作品名紅殻町博物誌
    メーカーraiL-soft発売日2009年7月24日
    原画天原埜乃シナリオ
    Ritaムービーyo-yu
    対応OSWindows 98SE以降対応お気に入り度7/10
    ディスクレス点数73
    プレイ時間約23時間


    文学風、懐古趣味漂う独特なテキストでやる人を選びまくるレイルソフト二作目の感想になります。
    随分前に絵と昭和感漂う雰囲気、高槻つばささんが出演しているということで買ったんですけど、ようやくプレイしました。
    結果は……まあ大体予想通りでしたね。

    以下は詳細な感想(一部ネタバレ部分は反転で読めるようにしています)。


    ◆ルート構成

    本作は基本的に一本道です。章ごとにスポットが当たるヒロインが入れ替わり、その章の選択肢でヒロインと深い仲になれる方を選ぶと最終章一つ手前で深い仲になった複数のヒロインの内どのルートに入るか選べる、というモノ。
    どのヒロインに向かおうが本筋の話は殆ど変わらず、EDで少し分岐するという点では11eyesに近いですかね。
    個人的には紅殻町の駄目な点の一つがこのルート構成かと。

    なんというか、プレイしていて思ったのはこのライター、エロゲ、というか一般的なエロゲの様式に向いてないのではないかと。
    それは後ほど触れる絵との連携を意識していないテキスト的な意味でもそうだし、ヒロイン個別ルートという大体のエロゲで採用されるルート構成的な意味でもあります。
    いっそ個別ルートという概念を捨てて、ハーレム、あるいは一人メインと定めた子以外はサブにするとかに舵を切った方がこのライターさんに関しては今より良いものになる可能性高い気がするんですよね。
    どうしてもヒロイン一人ずつにルートを用意しないといけない、その制約が合ってないように思えます。
    紅殻町の個別ルートなんて最後のED以外展開はほぼほぼ変わらないのに四人のヒロイン分びみょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーに変わった本筋のシナリオやらされるだけですからね。こんなやる気ないの見せられるぐらいならないほうがマシとしか。分岐できてないじゃんって。
    というか極論、三人称全画面表示縦書き(一応横書きにもできますが)かつ絵やSEをないものとして書かれたような装飾の文章、それこそ小説そのものを叩きつけている時点で今普及している一般的なエロゲの枠から外れているのになんでここだけエロゲっぽくしようとしたのかと疑問なんですよね。
    もっと言うなら紙の体験版なんて出してる時点でこの媒体で出す必要あるの? って。

    なのでルート構成という点では派手に躓いているなと。


    ◆システム+シナリオ

    さて、本作で最も人を選ぶ点、そしてファンを生んでいる点はやはり語彙豊富なテキストなのではないかと思います。
    先程も書いたように本作のテキストはテキストのみで全てが完結するような書き方で絵やSEと言ったゲームだから使えるものと連携する気がないものなんですよね。
    テキスト以外で説明できるものを全部小説と同じように文章でもやるものだから物凄くテンポが悪いです。
    おまけに全画面にテキストを表示するので折角良い雰囲気の背景や天原埜乃さんの美麗な絵が隠れてしまうんですよね。紅殻町は言うなればレトロかつ落ち着いた雰囲気を重要視した雰囲気ゲーだと思っているのでそれを構成する大切なパーツであるビジュアルを大きく損なってしまうこの表示方法はいかがなものかと眉をひそめました。素材を活かせてないと言えば秀逸な出来のOPムービーがあるにもかかわらず本編で使用してないのも×。
    また、こういった文学風、懐古趣味漂うテキストが魅力というのはわかるのですが、そういったものを小説ならともかく、ゲーム画面で読むのは非常に厳しいものがありましたね。疲れます。

    あとは普通の文庫小説と違い一行に表示される文字数が20と約半分(手元にある適当な小説を手に取ると蝿の王:38文字、わたしを離さないで:40文字、七回死んだ男:40文字)のため、必然的に小説より目を動かす回数が多くなるので疲れる、ダレると言った結果に繋がっているのではないのかなと。
    文字の大きさを大中小で選べる(読みにくすぎて大以外選ぶ気になれませんが)割にこの辺りは全く弄ることが出来なかったので、このような文体をゲームで、そして文章主体で魅せていくというのをどうしてもやるというのならばもう少し工夫すべきだったと思います。
    この辺り、何年も前からシステムにまるで進歩が見えない、する気がないように見えるライアー系列以外のメーカーで出したらもう少し違ったのでしょうかねぇ。この媒体をチョイスする意味が見えてこないんですよね。
    あとライアー特有の問題点といえばフルプライス作品なのにCGが55枚(FC特典のアペンドを当てると+3)とそこらのミドルかそれ以下の貧弱さ。ため息が出ますね。

    さて、本作のストーリーをざっくり紹介すると以下のような感じ。
    主人公・宮里智久は大学の研究室で資料整理をしている途中、東北のある町の歴史、それに纏わる不可思議な力を持った珍奇物品なる道具について書かれたノートを見つける。
    すると、そこに書かれた地名、紅殻町はかつて幼少の頃に智久が訪れたことのある町で記述者は行方不明となった叔父だったのだ。
    更に手記には「詳細不明」、「現在調査中」と書かれた珍奇物品が多くあり、智久はその中の一つ、「万能星片」に覚えがあることに気付く。
    かくして手記にある珍奇物品が完全な夢物語ではないとした智久は夏季休暇を利用して紅殻町へと足を踏み入れるのであった。

    基本的には以上のような不可思議な力をもつ道具を紅殻町で知り合ったヒロインたちと探し、その道具が引き起こす事件に巻き込まれていく、という展開。
    ここまで文句ばかり言ってきましたが、ヒロインたちが魅力的なのも相まってお話自体は中々面白いです。ですけど、意外と珍奇物品が空気なんですよね……全七章ある中で珍奇物品が推されるのはたったの三章ですし。公式でFuture Retroを掲げている割にこの辺は正直物足りなかったです。
    まあでも最後までやると分かるように、この作品の珍奇物品はあくまで道具でメインという訳ではないです。不可思議な道具、不可思議な現象、それらを内包する町、紅殻町。そんな現実なのか幻想なのかが曖昧となるような町で様々な不思議に触れていく内に幻想、作中で言う「物語」に憧れがあった智久は……といった風な。もし、あなたが現実と幻想、いずれかの住人になれるとしたらどちらを選びますか? といったようなことが描かれる内容です。
    この辺りがヒロイン毎に違った結末を見せて素直に面白かったですね。欲を言うならヒロイン毎にもう少し量が欲しかったところですが。

    ◆白子ルート
    プレイ前から一番株を上げたヒロインかつ好きなルート。最初エミリアがいるからどうでもええわとか思っててすまんかった。

    白子EDではレトロなものを愛し、変化を嫌い、古臭いままの紅殻町を愛するがあまり、変わっていく現実を捨て永遠に変わることのない幻想の紅殻町へ行くことになります。
    携帯式キネマハウスやそれ以前の件で何事も止まったままではいられないという現実を目の当たりにしたが故の逃げの選択。自分の夢に溺れる選択。個人的にはこの退廃的な雰囲気がたまらなかったですね。
    最後のCGも美しい。

    そして、白子について面白いのはルート自体もそうなんですけど、彼女の描写。
    本編ではそれはもうウンザリするくらい影が薄い、居るだけで場を暗くするとかそういった陰気な描写を白子が登場する度に挟んでいたんですけど、彼女がメインになる章・携帯式キネマハウスと白子EDを見ると感心しちゃうんですよね。
    最初は幽霊、人外の類なのかなぁと思っていましたが、上の章を終わらせると分かるのは町を守るためとはいえある種の人殺しに近いことを平気で繰り返してきた異常者であり、現実(というより現代に合わない古きもの?)とは相容れない性質を持つ異界の者、十瑚がいう地に足の着いていない人間。そういったものを表すための表現だったのかなぁと。
    最終章で「変わらないこと、それは永遠に停滞しているということ。死んでいるのと同じこと」とも言われていますしね。


    ◆十湖ルート
    物語の重要人物……なんですけど、担当の章が最初で以降は最終章まで空気のためポジションの割にイマイチパッとしないヒロインでした。私がこのタイプのキャラ好きじゃないのもありますけど。

    こちらも白子と同じく、現実ではなく、幻想・物語を選ぶED。ただし、決定的に違うのは元は現実の住人であり現実を捨てた白子と違い、十湖は最初から物語世界の住人であること。つまりは元いた場所に帰らなくてはという当たり前の行動なんですね。
    で、白子と違って現実を否定している訳でもなく、むしろ好意的なのでつながりは切れず、十湖の物語は本となって現実世界に現れると。
    この辺り、物語を個人の逃げの道具として使う白子と多くの者と共有してこそ輝くものとする十湖の性質の違いが見えて面白かったですね。後はこのルートだったかの堅物な宮里青年、その実体は夢見る一人の男の子の下りが好きでした。
    たぶん、古いものってある種の夢なんでしょうね。現在を生きる人には決してその中にあるものには触れられない。それはどこか物語染みていて、現実からは離れていて、だからこそ憧れになる
    、みたいな。

    ◆エミリアルート
    一番好きなヒロインで一番普通な悩み多き年頃の女の子。
    ビジュアル良し、性格良し、CV高槻つばさ……無敵か?

    ただ、ルートとしては現実組は物語組よりややパワーが劣る感が否めません。このルートは結局父親とは上手く行かず、家出してきたエミリアと一緒に生きていこうというところで終わり。
    個人的には父親と上手く収まらなかったところと前途多難な未来が待ち受けている、故に新たな物語の到来を予感させる感じが好きでしたね。十湖とも再会(本で)できそう。
    こうしてみると物語と現実を完全に切り離してしまう白子EDは異質ですね。


    ◆松実ルート
    この人はしょーじきドエロいことしか印象が……EDも紅殻町に残って一緒に暮らすというもので特に言うことが。
    強いて言うなら若さに任せて多少の無茶をしているエミリアルートに比べて安定していることか。たぶん、エミリアに比べてもう物語と呼べるほどの冒険はないかもしれません。そういった意味では色んな未来が待ち受けるであろう十湖、エミリア組。停滞もしくは安定の白子・松実組で分けられるかも。松実と白子を一括りにするのは
    なんか違いますけどね……。


    ◆えっちなしーん

    各ヒロイン……2

    シーン数こそ少ないですけど、紅殻町で一番気合が入っていたのはここなのではないかと思うんですよね。なんというか希氏のテキストの気迫が凄い。
    なんでしょうねぇ。恋仲になるまでの過程はイマイチなんですけど、一度男女の関係になるぞと匂わせてからの絡みがとんでもなくエロいんですよね。フェチ的なこだわりもありますし、タガが外れていく様子を描くのが上手い。特に松実さんと白子の初回エロ、ヤバい。語彙貧弱すぎて上手く言えないのが悲しい。
    ただ、文体のせいで地の文主体になりがちでヒロインの喘ぎやセリフが少な目なのが残念なんですよねぇ。ここさえ良ければ完璧なんですが。


    感想は以上です。
    それなりに好きではあるんですけど、作品として見ると根本から躓いているところが多いかなぁと。以降の作品でもあまり直ってなさそうですし。
    ただ、惹かれるものはあるので気が向いたら今度は花散峪山人考辺りやりたいですね。

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