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    紙の上の魔法使い 感想

    作品名紙の上の魔法使い
    メーカーウグイスカグラ発売日2014年12月19日
    原画桐葉シナリオルクル
    なしムービーなし
    対応OSWindows XP/Vista/7/8お気に入り度5/10
    ディスクレス点数56
    プレイ時間約26時間


    なんでしょうね。塗りのレベルが向上し、上手い下手はともかく原画を変えてきてシステムも載せ替え、前回よりもぱっと見お金を掛けてそうな感じがしましたし、二作目なのでこれは良い物になっているのではないかと期待したのですが、まさか運命予報をお知らせしますの感想で駄目だと思った部分を更に悪化させてくるとは……おまけにそれ以外にも綻びがたくさん出てきているのがなんとも。

    扱っている内容としてはかなり捻ってはありますが、前作に続いて恋心を追求しているものでそこまで悪くはないんですけど、シナリオ、というより設定だけのワンマンでは良いエロゲには成り得ないと強く思わされた作品でした。
    早い話が完全にエロゲであることを放棄した何かになってしまったんですよね、ついに。

    以下は詳細な感想(一部ネタバレ部分は反転で読めるようにしています)。


    ◆シナリオ

    本作のルート構成は前作、運命予報をお知らせしますに引き続き、章ごとにスポットの当たるヒロインが変わり、章の最後にそのヒロインと結ばれるか否かを選んでいくものとなっています。
    ただ、前回と違うのは全五章、ヒロイン一人に付き一章という配分だったのが、今作では全十三章+αと倍以上に増えたため、複数回メインの章を割り当てられている+ヒロイン以外にもメイン回が与えられているといった点が異なりますね。

    シナリオ内容としては魔法の本という特定の条件の基に開くと、書かれている物語を現実世界で再現させてしまう本に振り回されるお話。
    本の種類にはなんてことはない恋物語から下手をすると人に危害を加えてしまうような危険なものまであるので、その本の管理を任されているヒロインとそれに協力するキャラクターたちが無事に物語を終わらせ(本は物語通りに終わらせるとその間、関わった人たちの記憶を消し(本の管理者等は消えない)、その他本の設定によって受けた影響を本が開かれる前の状態までリセットしてくれる。例えば、主人公に据えた人間を記憶喪失にさせてしまう物語の本ならば、物語を結末まで進行させれば記憶が戻ってくるという風に)、本を回収していく、というのが基本展開。

    こういう話になると、操られている状態が多くなってくるのでキャラクターの人形化が危惧されるところですが……まあキャラ性「は」そこまで損なわれてはいなかったかなと(但し、一部除く)。
    その代わり、キャラの人間関係のかなり深いところまでスタート地点以前から既に魔法の本によって歪められているという前提があることが終盤に判明しますし、キャラ性が損なわれていないと言っても行動が制限され無理やり動かされていることになっている部分も多いので、全体的な茶番臭さは拭えず、これがそのままシナリオ的には致命傷になった感じがします。
    よく、シナリオを動かすためにキャラが居るのか、キャラが動いてシナリオが作られるのか、という風なことが言われますけど、かみまほに関しては完全に前者のスタイルを採ってしまっているのが、個人的には気に入らなかったですね。勿論、前者のタイプが好きという方もいますし、魅せ方でひっくり返る部分もあるので一概には言えないのですが、上で言った茶番臭さを増長させる設定ものしかかって来る上に魅せ方もアレなのでかなりキツかったです。

    その上、かみまほは情報の出し方が下手くそなのが茶番に拍車をかけます。怪しい言動や状況が出て、「何かあるな」というのは分かるのですが、殆どの場合で後に出てくる答えに導けるだけの情報を答え合わせの瞬間まで出してくれないんですよね。場合によってはそれまで全く開示されていない設定の後付け、もしくは一度出した設定をひっくり返すのもその時にかましてくるのでもう酷い。出していてもどの程度のことまで出来るのかを曖昧に濁していたり。
    作中で妃が出来の良いミステリ小説とは作中の文章すべてに意味があり伏線があると語るわけですが、伏線って受け手が答えを導き出せるだけの情報を答え合わせ前までの文中に含ませていて、尚且つぱっと見では中々気付けない、回答が出てそれまでの文を見なおす、または思い起こして、「なるほど、ここで答えが仄めかされていたのか!」 と気付くように出来ているのが伏線だと思うんですよね。
    ところがかみまほはその「必要な」情報をくれないので伏線は全く張ることが出来ていないなと。布石を打つという意味では出来ているんですがね。怪しいというのは伝わるので。でもこれだとどこまで行っても後出しジャンケンなんですよ。読んでいる身としてはそんなの有りかよ、それ最初から言っとけよ、という風にしかならないんですよねぇ。
    まあ、かみまほはミステリ作品ではないのでここまで言わなくても良い気がしなくもないのですが、一つだけとかなら流せるのに上で書いたことと今指摘した点を連発してくるので、何が出てきても「あーそうなの」という具合に流してしまいますし、茶番臭が酷いものになってしまっているのですよね。設定自体は面白いと思うんですけど、活用の仕方がド下手としか……。

    ただ、今回も扱っているテーマ自体は良いものだと思うんですよね。
    前作の運命予報では貴方はどうして恋心を抱いたの? 貴方が抱いたそれは本当に恋心なの? という風な恋心への疑いと恋心を確かなものへと昇華させるまでを描いた辛い部分がありつつも、甘酸っぱい恋物語でしたが、今回はそもそも自分が抱いているこの感情はなんなの? 好きなのは分かったけど、受け入れてくれる保証がないのになんで告白なんてしないといけないの? という風な恋心の自覚と恋心が敗れることの怖さと辛さ、そこから目を背け続けることのどうしようもなさを描いていて運命予報よりも更に恋愛の苦しい部分を押し出したものでした。
    恋心と向き合うという意味では運命予報と同じことをしていますね。恋愛は誰か一人だけを選ばなければならないという点も同じ。この辺りだけを見るならそれ程悪くはないのですが、それ以外が足を引っ張りまくっているのがなんとも。

    個人的に所謂、純愛モノと自分で銘打っておいて選べないからハーレムに逃げこむようなものは誠実さに欠けるような気がして好きじゃない(その辺りに逃げを見出さずに後宮よろしく性奴扱いするハーレムはエロシチュとしてとても強いと思いますが)ので、ルクルさんが提示する恋愛観は本当に好きなのですが……。

    また今回も力のあるシーンが幾つかありますしね。
    ローズクォーツの終末輪廻やフローライトの怠惰現象の本の力によりどうにもならない状況への抵抗が描かれるラスト、終盤に判明する実はサファイアの存在証明を開けていて、記憶をを失いつつも瑠璃への想いの強さからヒスイの排撃原理とアメシストの怪奇伝承を開き、ついに瑠璃へ辿り着いたかなたの想い。
    そして本作の全てをぶちまけたと言っても過言ではない、ラピスラズリの幻想図書館で妃が負け戦が確定した恋愛に恐れ、自分の恋心から目を反らし続ける夜子へぶつける言葉の数々もとても良かったです。

    キャッチコピーの「キミと本との恋をしよう」とかも本と本当のダブルミーニングになっているのも巧い。ただ、悲劇への持って行き方はイマイチ、というか不幸な方向へ行くことにご都合主義過ぎて駄目でした。無理やりハッピーエンドに持っていくのも萎えますが、逆でも醒めるものなんですね。なのでビターエンド好きの方にお勧めできるかというと微妙なところ。


    ◆力を入れるのが設定だけで良いならエロゲである必要性がない

    シナリオ周辺もボロボロなんですけど、かみまほの悪い点を挙げるならむしろそれ以外の方が圧倒的に酷いのが頭を抱えさせます。

    とにかくCGが酷い。確かにサイトのメインビジュアルを見ると塗りが向上していますし、前作の酷い絵を見た後だと桐葉さんの絵はあらいいじゃないと思えるのですが、蓋を開けてみればどれもこれも斜めに傾けてキャラをドアップに映したものばかりで、全部同じに見えるんですよね。
    加えてドアップにしてキャラを一人しか映さず、背景もほとんど見えない。それでいてポーズがおかしかったりするので、一体どういう状況で何をしているのかなどが伝わってこないんですよね。言ってしまうなら立ち絵見てるほうがまだマシなレベルですよ。CGがCGとして機能していないエロゲは初めて見た気がします……運命予報はこの辺はまだ出来ていたのですが、なんでこんなにも劣化しているんですかね。
    あと、絵で受け入れ難いのは頑なに一人のキャラしかCGで映そうとしないこと。かみまほは悲劇じみた恋愛話に塗れているんですけど、こういうシチュエーションになるとヒロイン一人だけではなく、恋人である相手(勿論シチュエーションによっては主人公以外でも複数キャラを描いた方が良いだろうというのもあります)も映した方がより儚さや切なさが出ますし、一枚絵としての完成度も高くなると思うんですけどね。

    特に妃ルート・フローライトの怠惰現象のラストシーン。
    闇子が書いた魔法の本によってクローンとして復活させられた妃が本物のコピー品である自身の存在と本によって妃と瑠璃が結ばれないように、夜子と瑠璃を結ばせるために書かれた設定に苦しめられ、紙の上の魔法から逃れるために教会に火を放ち、瑠璃と心中するというところ。

    ここでCGが入るんですけど、妃しか映してくれないんですよね……いや、こういう所でこそ儚くも強い意志を持って寄り添う二人を描くべきじゃないのかと強く思うんですけど、なんで描いてくれないんですか。もうこの際、ピアノの前に座った妃のドアップでも良いですけど、そこに後ろから妃を抱きしめてる瑠璃とか、傍に立たせている様子を入れてくれるだけでかなり印象変わると思うんですけどね……描けないのか、描きたくないのか、描く力がないのか。他にもこういう突っ込みたい所がたくさんあるのですが、全部挙げると大変なことになりますし、既に私がキレそうなのでやめておきます。
    全部お前の好みじゃないかと言われればそれまでですけど、勿体無いとしか言い様が無いです。悲劇的な内容であるからこそ、こういうところに力を入れるべきだと思うのですけどねぇ。

    あとはやはりOP・EDムービーとボーカル曲が一切ないこと。
    ムービーやボーカル曲が必要だと思う理由については前作の感想で書いたので、端折りますけど、まさかまさか今回ここが全部切り捨てられるとは夢にも思いませんでした。ここでEDムービー入るのかな? と思ったら= RIO END =と表示されて終了。全部のEDでこれですから余韻もクソもないですよね。ロー・ミドルプライスならともかく、フルプライスですからね、これ。
    このようなものは全体を一冊の本に見立てたと見ることが出来なくもないですが、だったら全体のシステムデザインを本みたいにするとかそういうのをしないと駄目ですし、出来てないですからね。まあ、その方向に行くならいよいよエロゲでやる必要がないということになりますが。

    結局、最大の不満は運命予報と同じで演出を軽視していることなんですよね。いや、今回の惨状を見るならば軽視どころか必要ないとすら思っているかもしれません。
    BGMや背景も単品で見るならば質は向上しているのですが、それを有効に活用できているかと言われれば否としか。
    別ゲーの話で申し訳無いのですが、例えばよく泣けると言われるエロゲのシーンとして(実際に泣けるかどうかは置いておくとして)G線上の魔王で主人公が宇佐美を庇うために事件の真相を黙秘して刑務所に入れられるというものがあるじゃないですか。あのシーンが力のあるものに仕上がっているのはテキストと次々に差分で変化するCG、挿入歌、ボイスなどが相乗効果を挙げてのものな訳ですよ。でもルクルさんの作品(二作しかやってはいませんが)では組み込めるだけの設定がありながら、そういう一つ一つのパーツを活かして良い物にしようという意志が感じられないんですよね。
    おまけにパッチを当てても前作と同じくらいに目に付く誤字脱字の多さ。ここまで来るとテキストすらそこまで力を入れるものではないと考えているのかと邪推してしまうレベルですよ。あとSEとかも全然使っていなかったですね。果たして製作者サイドは本当にエロゲを作りたいと思っているのか……。


    ◆えっちなしーん

    理央……3(内1つはパイズリのみ)
    妃・かなた……それぞれ3(内1つはフェラのみ)
    夜子……3
    クリソベリル……1

    シーンの少なさもさることながら目を引くのはあり得ないぐらい短い尺。運命予報も短かったですが、今回はそれ以下。
    この短さで抜ける人が居るなら見てみたいぐらいです。ここまでダメな点ばかりでエロもこの様。そもそも、この媒体を選んで恋愛をここまで重要視しているライターさんならセックスも重要な愛情表現の手段だと思って然るべきだと思うのですが、なんでこんなにやる気ないんですかね。
    以上、もう疲れました。


    感想は以上となります。
    運命予報を終わらせた時は悪い点を直せば必ず良い物を作ってくれるだろう、何よりこの人の恋愛観が好きだという期待と好意があったのですが、今回で前者は完全に打ち砕かれてしまいました。
    嫌いになれないものはあるのですが、もうルクルさんが作るものは余程私が好きな絵師や声優をたくさん起用してきたり等とということがない限りは手を出すことはないですね。エロゲとして見るならば最悪の作品だと思います。

    | エロゲ感想 | 10:37 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

    COMMENT

    個人的には最後までできたってだけでまあ悪くなかった。(流し読み)
    でもほかの媒体でやったほうがうまくいったんじゃないかなって思う

    | まぼろし(幻) | 2015/11/17 19:49 | URL |

    ラノベとかでやれって内容だったからなぁ……そういう意味ではかみまほはクソゲーにもなれなかったクソと言う他ない

    | くたばりかけの梟 | 2015/11/18 00:19 | URL |















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