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    七つのふしぎの終わるとき 感想

    作品名七つのふしぎの終わるとき
    メーカーetude発売日2011年12月22日
    原画植田リョウシナリオ竹田/青葉大
    川田まみ/吉河順央/船橋舞/オリヒメヨゾラ/ささかまリス子ムービー神月社/えん
    対応OSWindows XP/Vista/7お気に入り度10/10
    ディスクレス点数82点
    プレイ時間約19時間


    尊い。私の趣味にピタリとハマったゲームだったんですけど、反面、良い点悪い点が結構極端で評価はともかく、気に入る気に入らないは真っ二つに別れそうな作品でした。

    以下は詳細な感想です。(一部ネタバレ部分は反転で読めるようにしています。また、画像はあくまでサンプルですので大幅に縮小しています。画像の著作権はetude様にあるため、無断転載はお止めください)



    ◆冬の冷たさ、そして「暖かさ」を描ききった至高の冬ゲー

    本作最大の魅力の一つがコレですね。
    いやあ、七不思議は冬の季節感と言うんですか、そういうのが非常に良く出ているんですよ。
    冬の冷たくて、そして澄んだ空気と言うのを出せてる作品は結構あるんですけど、「冬」という季節を全て出すにはそれだけじゃ足りない。その足りないものは何なのかというと暖かさだと思うのです。
    凍えるような寒い外とは対照的に暖房の効いた屋内の心地良い暖かさ。多少寒くても人と一緒にその空間に居ることで感じるささやかな暖かさ。そういうものは冬自体が出しているものではなく、人工的に醸し出されているものだからこれらを冬のモノとするのは可笑しいという意見もありそうですが、それら全てを引っ括めて私たちが過ごしてきた、そしてこれからも身を置いていく冬という季節だと思うのですよ。

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    これらを上手く引き出してるなあというのはやはり背景の力に依る所が大きいでしょうね。
    特に右上の窓から射し込む光が象徴的で、木製の古めかしい雰囲気の廊下を前面に押し出すことで冬特有のあの乾燥していて肌寒い空気を、そしてそこに窓を通した太陽の光をプラスすることでほんのりと感じる暖かさを演出しています。
    なんか出来損ないの業者みたいなこと言ってて自分、クッソ怪しいんですけど、初めてプレイした時に素直に感動したんですよねー「ああ、冬なんだ」、と。
    シナリオ自体には冬であることを直接的に押し出そうとする所はそこまで無いのですけれど、随所に盛り込まれる会話イベント、主要キャラに用意されたコート着用verなどの豊富な立ち絵差分、CG、BGM、そして背景。それらが凄くいい雰囲気を作り上げてるんですよね。

    冬ゲーという着眼点で珍しいのは本作には「雪」が一切出ないこと。にも関わらずここまでの世界を練り上げたのは素直に賞賛したいです(まあ、雪が画面を彩って欲しかったなあと思う所もありましたが)。
    他のゲームと違うというともう一点。基本的に恋愛が主題となるエロゲでは冬というと何かとクリスマスが押し出されがちな傾向がありますが、本作ではクリスマスより正月がピックアップされている所ですね。これは主人公のおばあちゃんがサブキャラに居て(主人公の智はおばあちゃん子)、寮暮らしの主人公が頻繁に実家に帰る描写があるためですが、この辺りのまったりとした雰囲気も良いんですよねえ。正月って交通量とか人の出が少ないせいかいやに時間がゆったりしているような感覚があるじゃないですか、あれが充満してます。
    ちなみに正月、女の子と来ると振り袖ですが、エリス以外は振り袖姿完備(立ち絵もCGも専用のもの有り! エリスはその代わり他にコスプレ有り)です。やったぜ。


    ◆七つのふしぎと時計を巡る青春劇

    シナリオですが大まかな内容としては以下の通り。
    昭和の世から自身の抱えた病気の治療法が見つかる時代の到来を待つため、生まれ持った時を操る力でコールドスリープ的な状態に身を置いた時任七穂。
    彼女をひょんなことから目覚めさせてしまった主人公・進藤智とその仲間たちが目覚めて無事に病気を治した七穂を元の時代に帰すために必要となる七つの不思議な力を持った時計を探しはじめる……という感じ。

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    「時間」に関係する不思議な力を持つ時計を集め、また、それに付随する古くから学園の水面下で蠢いている七不思議の謎に立ち向かっていくのが基本ストーリー。
    時間を操る、というと結構壮大な作品に思われるかもしれませんが、時間操作は基本的に学園内限定のため、そこまで大事にはなりません。あくまで不思議な出来事を扱った青春モノです。
    しかし、それらを一筋縄では行かせないのが主人公以外の時計を求める勢力の存在。
    ただ時計を集めるだけなら単純な競争・奪い合いで済むのですが、七不思議には七ヶ条の掟なる特殊なルールが決められており、その中の「七不思議を言い当てられたとき、時計は力を失う」、「掟を破れば、死神が大切なものを奪うだろう」。この明らかに不味そうな二つが軽い意味での競争・奪い合いを戦いに発展させる場面が多々有ります。
    この辺りの心理戦が竹田さんのスラッシュで区切り並べられた単語や体言止めを有効に使って鬼気迫るテンポを醸し出すテキストも相まり、息の詰まるような緊張感がありました。
    また、時計を巡る静かな戦いはメインもサブもキャラが総動員でそれぞれ動き、傷付けられる者も出てくるので中々に重いです。特にふみルート、七穂ルート、trueルートのクオリティは逸品。伏線の張り方もGOOD。

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    とまあ、シリアスな雰囲気が作品に根を下ろしていますが、それと同じくらいに魅力的なのが仲間との右も左も分からぬ状態で繰り広げる手探り感全開の七不思議解明&時計探索のお話。
    明確な目的を持った仲間たちがそれぞれ額を擦り付け、地道に、時に迷いながら、しかし着実に目的達成の瞬間へと迫っていく描写が素晴らしいんですよね。時ノ台のようなレトロな学園の校舎を隅から隅まで洗い出していく小さな冒険がTHE・青春という感じでニヤニヤしてしまいます。
    また、男子も女子も巻き込んだアホなノリの日常描写も非常に上手く、私もこんな学園生活を送りたかったって心の底からそう思わせる力がありましたね。この日常描写のお陰でシリアスな七不思議パートとのメリハリが効いています。ただ、それに伴いキャラがどいつもこいつも曲者揃いなのでそこの辺りが好みの別れどころか。ヒロインの可愛さは保証しますが。

    キャラといえば物語で最も重要と言ってもいい主人公ですが、本作のそれである智くんがまた良いキャラしてるんですよ。
    趣味が写真なこともあり、兎に角周りを良く観察し、常に思考を張り巡らせていて(悪く言うと小賢しい)おまけにコミュ力も高め。しかし、風采が上がらず、そして普段小賢しく頭を回転させているせいで不足の事態を処理しきれなかった時に人よりもやたらとショックを受けてしまうというエロゲでは非常に珍しいタイプの彼を上手く描いています。ここまでしっかりキャラ付けして良く喋るならボイスあった方が絶対良かったと思うのですが、その辺りはエロゲの宿命か。にしても主人公が個性的な作品はやっていて面白いですね。
    そして、彼は今作のかなり重要な……というか数ある中の(個人的に思った)七ふしぎ最大のテーマである感情。何かを想うこと。誰かを想うこと。もっと言うならば愛を背負った主人公でもあります。そこの辺りは是非にtrueルートをプレイして確かめていただきたい所。
    ふみルートの智・ふみペアと会長の対比構図や智くんと会長のやり取りが本当に良かったですね。

    ただ、マイナス要素も少なからずあって、ヒロインも「友達」として描くことを重視した余りに恋愛要素が若干薄めになっている所が一つですかね。これは特に七不思議をメインに据えた竹田さんのシナリオで顕著です。
    後はシナリオの設定が矛盾してないかこれ? と思う所が幾つかあるのとテキストがかなりややこしい部分があります。このテキストに関してはメインライターである竹田さんが恐らく担当であろう共通、ふみ、七穂、trueが該当するのですが、キャラが質問に答えず全く別の話をし出して質問を放置したり、説明不足……というか読み手への配慮不足を感じる場面があることですかね。ちょっとでも流し読みしてると途端に置いていかれる場面がちらほら。
    私の読解力がクソなのもありますが、とにかくテキストに注意を凝らしていないと思わぬ所で理解できなくなる場面がありました。

    あとはまあ真っ白死神のご都合主義を体現したかのような動きも人によっては相当なマイナスポイントになるやも。

    そして、個人的に最大の不満、といかもう本作の戦犯とも思っている青葉大さん担当シナリオ(恐らくは、いや間違いなくエリス、深咲)について。まあこの方が書いたシナリオは竹田さんと違いキャラがブレまくってるんですよね。
    極端に主要キャラが恋愛脳になっている上に普段の理知的な姿は見るも無残な残骸になっています。特に智くんが無個性主人公と化したり、会長が妙に下ネタしか吐かないキャラになった時の「うわぁ」という感じは思い出したくもありませんね。

    おまけに七不思議と時計がシナリオのメインだったのに対し、やったら安い描写の続く恋愛がメインになり完全に七不思議は置き去りにされ、申し訳程度に触れるだけってのが問題。てか単なる単調な萌えゲと化してるんですよ。いや、萌えげー化はともかく、この作品のキャラを崩壊をさせてしまってるというのが致命的でした。

    深咲はともかくエリスはそれなりに重要ポジションに居るキャラでもっと掘り下げることが出来たはずなのに……気になる七不思議と時計ほっぽりだしてクソみたいな嫁ネタや明らかに好き合ってるのに付き合わない二人を周りが強引なお節介でくっつかせようとしたり、お粗末な対会長戦とか色々酷い。これをクソと言わずなんと言えと? 擦り合わせる時間が足りなかったとかなるべくメインの竹田さんのシナリオの邪魔にならないように七不思議関連はあまり扱わないようにしたとかそんなサブライター故の配慮もあったのかもしれませんけど、クソです(しかし、氷子を押し出してくれたり、エリスルート終盤のテーマは嫌いではありません。むしろ大好物でした。氷子の一部台詞もグッと来たものがありましたが、いかんせん魅せ方が酷い)。
    もうこの人のせいで全体のクオリティが二段ぐらい下げられていると言っても過言ではないでしょう。

    細かい不満点としてはクオリティの高いBGMと歌・ムービー共に至高のOP、ヒロインED毎に専用ボーカル曲が用意されていたり、総じて力の入った音楽面なのですが、あともう一曲、「居場所」以外にバトル用っぽい感じのBGMが欲しかったですね。緊迫感のある場面では大体これしか流れなくてちょっとマンネリ気味。敢えて云うならば、こうボス戦用的なのが欲しかった。
    あとサブヒロインのルートが死ぬほど欲しかったですね。発売日から数日後に速攻でハガキに「氷子FD出せやオラァ!」みたいなこと書いて出したのですが未だに出ません。どういうことでしょうか。
    んで、もう一個は人形と死神ですかね。人形はともかく、死神の正体はもう少しぼかして引っ張った方が面白くなるよなあと。あれじゃあ某怪盗や巫女状態ですし……。

    そうそう、ルート攻略順ですが個人的にはふみ→深咲→エリス→七穂→trueをオススメします。
    強制するつもりはありませんが、最初にふみ、最後に七穂はなるべく崩さないほうが良いかなとも思います。

    ◆遊び心とお洒落デザインが盛り込まれたシステム周り

    本作の無駄に力の入ったこれには触れないわけにはいけませんね。

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    まずはコンフィグの設定画面。
    これ画像だと分からないんですけど、懐中時計の秒針が動いてたり、テキスト設定から音声設定というように切り替えると時計の盤面が動いたりして面白いんですよねー。
    体験版が出た当初、なにこれ面白いと設定画面でひたすら盤面をコロコロ動かして遊んでましたわ。

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    アルバムモード画面。
    これもまた凝ってて画像から分かるようにマウスを乗せたキャラにカメラのピントが合うようにしてピックアップされるんですよ。で、クリックするとカメラのシャッター音がなると同時に暗転、選んだキャラのCGが見れると。

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    そして音楽館書モード。
    画像から分かるように(二回目)ボーカル曲はなんとOPやEDムービーの映像+歌詞が小窓に表示されるという素敵仕様。アイキャッチも動画付きで全種類再生可能、BGM再生ではそのBGMの雰囲気に合わせて選ばれたCGがスライドショー形式で映されるという気合の入れっぷり。
    文句なし。むしろ何故ここまでやった。完璧。(但し、このスライドショーはネタバレCGも表示されるので全クリ後推奨)

    最後にネタバレといえばクリアするまでパッケージ裏面は見ないのが吉。プレイ前に出すと不味いんじゃないのって感じのCG堂々と掲載されているので。

    感想は以上です。
    今までやったエロゲの中で一番好きだと言えるゲームだと確信しました。
    再プレイ始めた当初は所謂思い出補正で必要以上に美化されているのではないかと自分の記憶に疑いがありましたが、杞憂でしたね。好き好き大好き。
    にしても終わった時の寂しさと言ったらもう……終盤も良いところの台詞なので書きはしませんが、trueルートエピローグの主人公の独白と里瀬おばあちゃんとのこの作品の全てを象徴するようなやり取りは聴いていて何ともいえない感情に押し流されそうでしたねえ。
    てか流されましたわ……なんか高校生活終えた時のこと想い出しました。ここまで自分好みのゲームに出会えたのは僥倖。竹田さんが全ルート書いていたら間違いなく100点付けてたと思います。
    でもまあ、不満点もありますし、作品全体の癖が強いので人気でないのは分からなくもないのですが、ワゴンゲーと化しているのは唯唯悲しいですなあ。もし、この感想で少しでも興味を持ってくれた方が居たら体験版を是非どうぞ。

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